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By Takehiko TSUBAKINO/FISH NUDIST on 2015.04.11

水窪物語 其の二 =Fish Nude #7=

『これは綺麗に模様が出てますね』

 

Kさんと私は、アマゴのパーマーク=魚体の側面に並ぶ楕円の模様=を一つずつ確かめました。このマークは人間の指紋のようなもので、一匹ずつすべて異なります。幼魚では比較的くっきりしており、大きくなると曖昧になり、ほとんど消失してしまうくらい変化します。これだけでも三時間くらい過ぎそうです。

 

そして何より、美しい鰭<ヒレ>の魚ばかりです。私が無理を言って魚を釣っていただいたのは、「鰭」のためです。魚の美しさには鰭が命で、池で養殖されたものは、いくら活きがよくても、鰭や顔の先が丸く削れてしまいます。雄大な川で何にも邪魔されずに育った魚が必要で、これは海でも同じです。

 

ひとしきり眺めたあと、生簀の中の魚をそっと“目隠し”しながら手に収め、移送用の容器にうつし、御礼を申し上げ、作業場を後にしました。

 

水窪川のほとりにあるFさん経営のカフェに戻ったのが午後一時。一息つかせていただきました。

 

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

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<特産のお茶でおいしい冷茶を頂きました。爽やかな甘み、優しい渋み、生茶感がすごいです>

 

途中の鉄道では岩石に思いを馳せましたが、次は、よりクローズアップして川に降りて植生を。魚の周辺に何があるのか、ひとつひとつ観ていくのが楽しみでもあります。

 

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

 

<川沿いの風物詩、オニグルミの若実>

 

花が散って実をつけたばかり。熟すと褐色になってきます。地面に落ちて腐ると、ほぼ真っ黒のような焦げ茶になります。私は早く腐らせるために、よく地中に埋めていました。真っ黒になったクルミを川で洗うと、簡単に外皮がとれて、お馴染みのクルミの姿になります。因みにトルコの藝術家達は、この外皮で深遠な色に染めて細密画を描いています。

 

watercress

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

 

<クレソンの群生>

 

浅瀬がある川では、探せばどこかにクレソンが生えています。神戸でもちょっとした清流には生えていて、みなさん採られています。挿し木をしてもすぐ根を出すくらい繁殖力が強いので、一本だけということは稀で、通常群生しており、カフェの真裏にすぐ見つかりました。晩のサラダや鹿肉の付け合わせになります。このほかに笹や幾種かの野草もあり、掻敷<かいしき>に使いました。

 

そして本題。川辺で撮影場所を探します。=fish nude #1=でも書いたのですが、自然に泳いでいる魚は表情もカラダも弛緩し、全くSexyではありません。魚がその気になれば逃げ出せる、背鰭が出るくらいの浅瀬が必要なのです。

 

Photo Credit: Takahiko Tsubakino

Photo Credit: Takahiko Tsubakino

 

<植生豊かな水窪川、嗚呼得難き哉。>

 

程なくして、美しい小石の浅瀬が見つかりました。ふと顔を上げると、朝からの小雨が上がり、深い霧の間から青空が出て緑が映えます。水窪の地形のなせる業だと、また思いを馳せました。

 

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

 

<沢蟹も出てきました>

 

さて撮影です。水中に居るかもしくは命尽きた魚は、常に目を開いて、正面を向いています。一方、生きた魚が水から出ると、少し伏し目がちになります。何も考えていないように見える魚が表情や感情を持った気がします。釣り人は皆、多かれ少なかれ、この瞬間が好きなはずです。

 

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

 

<イワナのアイシャドーを撮る>

 

あまり時間をかけると魚の体力がなくなって来、私も集中力が切れてきますので、思いつくまま、どんどん撮ります。魚と呼吸を合わせながら、何百枚も撮ります。油断したら逃げられてしまいますので、手で脱出を防いだり、そのたびに手や膝が濡れるので拭いては撮り、こちらもハアハア息が乱れました。

 

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

 

<浅瀬でカラダをくねらせ、躍動するアマゴ。背中から尾にかけて、すごい>

 

こうした浅瀬の魚を撮ると筋肉が写ります。漲る力。三島由紀夫は昔、『美とは何ですか』と訊かれて『内にたわめられた力です』と答えましたが、云い得て妙、たしかに美しい。

 

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

Photo Credit: Takehiko Tsubakino

 

<脱走寸前のアマゴ>

 

誰もいない川で一人騒ぎながら色々撮っていたのですが、水窪に着く前後から、実は撮りたい写真のイメージは出来つつあったのです。

 

<つづく>

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椿野武彦/FISH NUDIST

書道家として日本語・中国語の書を修めた後、トルコへ2年間のカリグラフィー留学へと向かう。現地では、アラビア語の書を学ぶ日本人として注目を集めたが、留学期間終了に伴い日本へ帰国。 現在は、魚への愛が高じ、写真家としての活動も活発に行なっている。彼の撮るSASHIMIは、既に欧米のメディアを通じて世界へ発信されているが、当メディアでは、彼の作品だけではなく、「魚の最も美しい姿を撮っていきたい」という彼の想い、"魚のエロ本 Fish Nude"と独特の世界観、表現で語られる世界をお楽しみいただきたい。 (編集による紹介)

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