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ビルのシャワー排水で作ったビールがコロナを抜いた?!——サンフランシスコの浄水器メーカーの挑戦 32

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ビルのシャワー排水で作ったビールがコロナを抜いた?!——サンフランシスコの浄水器メーカーの挑戦

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ビジネス誌Incが、サンフランシスコのEpic Cleantec社が手がけた、ある奇妙なビールの話を伝えている。原料は、シャワーと洗濯機を通った排水。一度は捨てられるはずだった水だ。

記事が照らすのは、技術ではなく人の心の方だ。水はとうに澄んでいる。濁っているのは、飲む前に身構える人間の側——その一点を、一杯のビールが静かに剥がしていく。結果より、疑いをほどく長い過程に光が当たる。

How a Beer Made From Recycled Wastewater Just Outsold Corona and Stella Artois (Inc.)

ビールの大半は水だ。当たり前すぎて誰も口にしない。そこに一社が指を入れた。シャワーの湯、洗濯機の排水——一度は捨てられるはずだった水を、飲めるビールに変えた。売上でコロナを抜いた、という話がついてくる。だが本題はそこではない。人が何を疑い、何を疑うのをやめたか。それだけの話だ。

一滴に残るもの

水は何度でも姿を変える。雨になり、川になり、蛇口を通り、排水口に消える。消えたと思うだけだ。ほんとうは巡っている。この会社のCEOは、いまの社会を「流して、忘れる社会」と呼んできた。作り替える必要がある、と。心理の問題なのだ、とも言う。人に「この水はきれいだ」と告げても、信じる者もいれば、信じない者もいる。

ビールは、その大半が水でできている。だから水を語る器として、これほど正直なものはない。中身の九割以上が、元は何だったか。一杯は、その問いを静かに突きつける。

🖼 本文挿入画像 #1・水滴が跳ねる真上俯瞰のマクロ(1024×1024)

「排水」という言葉の重さ

やったのはEpic Cleantecという会社だ。2015年、サンフランシスコで排水を再生する事業として立ち上がり、独自の技術でオフィスや集合住宅の水を浄化し、再利用してきた。この街を選んだのには理由がある。10万平方フィート以上の新規開発に対し、建物内での水再生システムの設置と運用を義務づけた——全米で最初にそう定めた都市だからだ。

水源となったのは一棟の高層住宅。Fifteen Fiftyという40階建ての高級マンションだ。ここに据えられた仕組みは、一日あたり最大7,500ガロン、年間で最大275万ガロンを再生するよう設計されている。シャワーや洗濯から集めた排水を処理し、館内のトイレや小便器の洗浄へ回す。

最初は実験だった。2022年、EpicとDevil’s Canyon Brewing Co.は、実証として7,500缶のケルシュを造った。市販はされていない。当時、排水を飲料に使うことは規制で認められていなかったからだ。それでもこの試みは、TIMEの最良の発明に選ばれた。誇張はいらない。缶の数は、缶の数のままでいい。

透明になるまで

元が何であったかを問う前に、いま何であるかを見るべきだ。工程は詩ではない。ただの手順だ。

Epicの仕組みは、水をシャワーと洗濯からのみ集め、複数の段階を通す。フィルター、生物学的処理、膜ろ過、粒状活性炭、逆浸透、そして消毒。醸造の過程では、さらに煮沸と加熱処理が加わる。これらを合わせると、汚染物質は99.9999999999%まで除かれる。無色になる。無臭になる。過去が抜け落ちる。

再生された水は、多くの都市の水道水より清らかだと会社は言う。元がシャワーの湯だったか、雨だったか。処理を終えた水にとって、それはもう履歴に過ぎない。いまこの液体が何であるか。問うべきはそれだけだ。

舌は記憶を疑わない

人は、水で不味くなる。情報で味わうからだ。「排水」と聞いた瞬間、舌はまだ触れてもいないのに身構える。

Epicの再生水は、すでに厳格な安全基準をくぐり抜けている。それでも人は、グラスの中身を前に喉の奥がすくむ。ところが同じ分子を美しい缶に収めると、とたんにそれを気に入る、とCEOは言う。ここに、この話のいちばん人間らしい部分がある。

懐疑派は、いる。あるイベント会社の経営者は、当初この試みを少し疑っていたと明かす。仕掛けものは信じない、と。だが間違っていた、と続けた。爆発的にウケた、と。その人物は、Epicへの初期の投資家でもある。舌が納得した後、頭が折れる。順番は、いつもそうだ。

なぜコロナを抜いたのか

商業版は、隠すのをやめた。今度は水の出自を堂々と名乗り、受容の限界を試す。そうして二つの再生水ビール——Shower Hour IPA(ABV6%)とLaundry Club Kölsch(ABV4.6%)——が投入された。缶には、ピンクのタイルに囲まれたシャワーの情景と、洗濯機の中の絵。

発売は2025年11月、全米最大のグリーンビルディング会議Greenbuildの時期に合わせた。そして数字が動いた。CEOによれば、あるイベントでこれらは、コロナやステラ・アルトワといったアンハイザー・ブッシュ・インベブ製品の売上を上回ったという。

話題の勝ちか、味の勝ちか。答えは急がなくていい。ステラ・アルトワは、その源流をベルギーの古い醸造の歴史に持つ名だ。その隣で、生まれたばかりの再生水ビールが選ばれた。少なくとも、その催しにおいては。数字は数字のまま置く。解釈は、飲む者に委ねる。

濁っているのは、いつも人の側

技術はもう、ほぼ澄んでいる。濁っているのは人の側だ。この会社が挑んだのは、水再生の普及を阻む最大の壁——「再生水」と聞いた瞬間に立ち上がる、本能的なためらいだった。安全基準を満たしていても、人はグラスを前に居心地の悪さを覚える。

だから水源を隠さず、名前にした。シャワーの時間、洗濯クラブ。あえて出自を掲げることで、抵抗そのものを話題に変えた。一杯のうまいビールが人の考えを変えられるなら、この技術を大規模に展開したときの影響を想像してほしい、とCEOは語る。宇宙飛行士が同種の技術で再生した水を飲んでいることも、しばしば引き合いに出される。

技術より手強いのは、常に人の感情だ。それを澄ませるのに、この会社は説明書ではなく一杯を選んだ。

グラスの底に沈む問い

無駄を削げば、水は水に戻る。それだけのことに、人はずいぶん長く抗ってきた。飲む前に何を疑い、飲んだ後に何を認めるか。その距離が、偏見の正体だ。

バーの側から一言だけ添えるなら——澄んだ一杯に、余計な物語はいらない。再生された水も、クラフトの一杯も、突き詰めれば同じ問いに行き着く。Sprizz 28のようなロングドリンクを組む時でさえ、味を決めるのは中身の大半を占める液体の質だ。器を疑うのをやめた者だけが、その底に届く。

グラスを空ける。残るのは、静かな一つの事実。水は、何度でも澄む。疑いだけが、なかなか澄まない。

ビルのシャワー排水がコロナを抜いた——サンフランシスコの一杯が試した「人の側の濁り」 解説図

澄むのは技術で、濁るのは人の心。ためらいを一杯でほどく静かな継続。

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タグ
Epic Cleantec, サーキュラーエコノミー, サンフランシスコ, スタートアップ, 気候テック, 水再利用, 消費者心理
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