うつくしきふつう=迷路シティーFesにて職人に出会う, Morocco vol.2=
ArtBy Naho Inoue on
着飾りもない砂色の街。砂漠方面へと南下してきたことをそれとなく感じさせる。
「Fesへは迷いに行きなさい。」
アオい村で、歯抜けおじさんが深いシワをさらに深くしながらこうアドバイスをくれた。
中世のイスラム都市が外壁と共に現代にタイムスリップしてしまったような街、フェズ。
メディナと呼ばれる旧市街の入り口門をくぐれば、超巨大迷路の始まりだ。
ほんのりとしかし、しっかりと鼻にまとわりつくような心地悪いにおい。
まさに迷路といった、細くうねり枝分かれする通りには、ひととモノが無造作にぎゅうぎゅうに並び、もはやここは外ではなく、ガラクタ箱に入っている気分になる。
中世からの血を受け継いできているであろう民たちは、身体とものを空間にねじ込み、生きるために商売をしていた。
ひともまた、魔法をかけられるような話術と笑顔のあの村とは対象的。
相変わらず深い色をした目で、黙々と、黙々と、なにかを作る職人にあふれていた。
モロッコに恋をした理由のうちのひとつ、雑貨。
”ガラクタ”のように、無造作に並んでいるそれらひとつひとつは、大抵が職人の手作りで、宝探しのように魅力的なものに満ち溢れている。
濃い目の原色に少しミルク色を混ぜたような絵の具でベタ塗りされた陶器
それを手でひとつひとつ砕き、絶妙な色と形の組み合わせて蘇るタイル
しっかりと鞣された革のバブーシュ(スリッパ)
(なにをつかって”なめされて”いるかは後ほど)
やたらと金糸がめだつショッキングピンクのストール
重ねすぎて商品を手にすることができないずっしりとした絨毯
表情がひとつひとつちがうラクダの置物もなめし革でできていた。
ちょっと仲良くなったおじさんに、この街を覆っているニオイはなんなのかと聞くと、あるところへ連れて行かれた
蜂の巣のような、家庭用お風呂のような謎のその光景は、なめし革工場の屋上より。
私がカメラを構えている横には恐怖さえ覚える大量のハト小屋。
革を柔らかく、しなやかに保つ技術である、鞣し(なめし)。
植物性から薬品まで主流となる加工方法がいくつかあるらしいが、モロッコきっての鞣し革地区、フェズでの伝統技法は。
よく使われていた燻し、塩、油・・・ではなく・・・・・・ハトの排泄物。
!!!!!!!!!
そんなFesの迷路にて人々の目と足(と鼻)を捉えて離さないモロッコ雑貨を生み出す本気の職人たちは、とても渋く格好良かった。