The motion & The moment.〈Extra edition〉
ArtBy Hiroyuki Toyokawa on
エナジィ漲るNew York
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A Happy new year 2016.
〈年明けということで、番外編として今回はニューヨークのカウントダウンを。2016年の記録ではなく、2014年の記録ですが雰囲気だけでも。〉
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高層ビルが立ち並ぶマンハッタン。
街中をすいすい走るイエローキャブ。
ドライバーには、様々な国からアメリカンドリームを夢見て出稼ぎに来た外国人が多数いるようだ。
有名なはずのアポロシアターを行き先として告げてもピンと来ず、住所を教えてやっと連れて行ってもらったことがある。
地下鉄のホームでは、ストリートミュージシャンがグルービーな演奏を繰り広げ、たくさんの投げ銭を集めていた。
大道芸や楽器演奏、アートなど様々なジャンルの人があらゆる場所で自己表現が出来るニューヨーク。
パフォーマーが持つ静かなるエナジィはやがて、楽器などを介し自己表現へと変換され、人々に伝播していく。
ニューヨークの街中では、そんな光景があちこちに見られる。
やはりここはとても刺激的な土地なんだと感じた。
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クリスマスも過ぎて年明けモードに入る頃、ニューヨーク・マンハッタンのターミナル駅であるグランドセントラルステーションは利用客で混雑していた。
2014年に駅舎生誕100周年を迎えたこの建物は、床面には大理石が使われ、天井は高く星座が施された荘厳な作りになっている。
そんな映画のセットのような状況の中で、切符を買い求める乗客や、別れを惜しむ家族や恋人たちの様子が印象的だった。
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尿意という驚異のカウントダウン
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ニューヨークのカウントダウンは、世界的に有名だ。
2014年になる年に、自分はその現場に立ち会ったことがある。
午後3時くらいから、会場であるタムズスクエアでは入場規制が掛かり、計画的にカウントダウン参加者をブロック毎に隔離していく。
隔離された瞬間からカウントダウンまでは耐久戦だ。
氷点下になるほどの寒空の下、トイレに行くこともできない。
トイレの為に一旦隔離されたブロックから出てしまえば、二度と同じ場所には戻れない仕組みだ。
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一人で参加した為、話す相手もおらず、ただただ首をすくめて寒さに耐えるのみだった。
冷気に晒された体は冷え込み、やがて膀胱も縮こまっていった。
当日は、このカウントダウンの為に水分を摂らないようにしていたのにも関わらず、
じわりじわりと尿意が襲って来た。
その傍ら、デカイ体をした西洋人はコーヒーを飲みながらニコニコしてやがる。
コーヒーなんて飲んだら即ゲームオーバーなのに、どうしてそんなに余裕な顔していられるんだと苛立つも、尿意という驚異も確実にカウントダウンを刻んでいた。
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フィナーレは雪のように
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やがてチラチラと雪が舞って来た。
とても綺麗だった。
高層ビルの電光掲示板にはマイナス3度という数字が灯っていた。
まるでその雪は何かのフィナーレを告げているようだった。
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そう、自分の尿意が限界を迎えたのだ。
ついに自分の膀胱は限界値を超え、Emergencyのサイレンを鳴らし始めたのだった。
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それは隔離されてからわずか2時間後の出来事だった。
自分の寒さへの耐性が非常に弱いことを痛感した瞬間だった。
なんとも後味の悪い2013年だっただろうか。
悔しさを噛み締めながら宿泊先へと戻った。
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2013年の大どんでん返し
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室内の暖かさに触れた時は、どれだけ幸せだっただろうか。
膨れ切った膀胱もスタンバイ状態に戻り、冷え切った体の震えも止まった。
おもむろにテレビを点けると、なんとタイムズスクエアの会場を中継しているではないか。
たった今、己の弱さの為に、はじき出されたそのメイン会場の光景が。
冷静になった自分の頭の中では、
「せっかくここまで来たのに、カウントダウンに参加せずにニューヨークを後にするのか!」
「いや、でもテレビでカウントダウンを見た方が綺麗だし、暖かいし。。」
そんな悪魔と天使の攻防が頭の中では延々と繰り広げられていた。
そして、リベンジを決めた。
22:00頃宿泊先を出て、再度タイムズスクエアへと向かった。
会場は既に湧いていた。
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ただ、メイン会場に向かおうと思っても、どこも警察が立ちはだかり、メイン会場には向かえないようになっていた。
隙だらけのニューヨークポリスだが数が多すぎる。
さらには、バリケードなどで計画的に隔離された通りでは、身動きが非常に取りづらくなっていた。
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それでも警察の目をかいくぐり、少しづつ歩みを進めるも、1ブロック手前まで行くのが限界だった。
そこでは、メイン会場の熱気が見える場所だった。
自分がもっと寒さに強ければ。。
自分の膀胱があと少し大きければ。。
そう感じざるを得ない、ものすごくもどかしい距離だった。
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メイン会場の熱気は最高潮に。
やがて、カウントダウンを知らせる声もメイン会場から漏れてきた。
スリー。
ツー。
ワン。
HAPPY NEW YEAR!!
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なんとかリベンジは成し遂げられた。
メイン会場でカウントダウンを迎えられなかった悔しさはあるが、
二度とここでカウントダウンを迎えようとは思わなかった。
終始ここでカウントダウンを迎えられた人を尊敬したいと思う。
それくらい過酷なイベントだと感じた2014年だった。
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もとい、2016年明けましておめでとうございます。
2016年、今年もよろしくお願い致します。
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Photographer? Hiroyuki Toyokawa