うつくしきふつう=壁をぶち壊せ Berlin, Germany=
ArtBy Naho Inoue on
この街はかつて東西に分かれていた
のは、あまりにも有名なはなし。
ステイ中ずっと続いたどんより空も、その重たい歴史を顕わすにはぴったりだった。訪ねるところ訪ねるところ、歴史にまつわる建築物。
が、わたしのシャッターを切る手をノンストップにさせたのは。全く想像もしていなかったその街のもう一つの顔。重たい歴史を経たあとの今の顔。
ベルリンの壁
壁のストーリーは、教科書で学んだ程度しか知らない。毎度のことだが背景を改めて調べてみてみると、おもしろい発見がある。
オープンギャラリーとして現存する1.3kmにわたるベルリンの壁。ひんやりずしんとしたイメージを気持ちいほど覆される。そこには個性と個性のぶつかった、アーティストが思う存分主張できる巨大キャンバスが広がっていた。
経済の安定を求めドッと西に人が流れ出て行ってしまったベルリン。逆に入ってくるひとにとっては格好の”かき回せる場”であったという。わたしが惹き寄せられていたのはどうやら、なにかを創作したい、クリエイトしたいピープルの足跡だったようだ。
それぞれの想いを
爆発させる
目移りするその長い長いキョーレツな壁は、エネルギッシュにポジティブに、それでいて静かにどっしりと、昔と変わらない位置に、昔と変わりまくった表情で佇んでいた。
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街だってキャンバス
グレーの空の日、ひと気のないグレーの街中をぼんやり歩く。通りすぎたあとに、ふと空間が気になり引き戻す。だいすきな映画の神隠しのように、トンネルの向こうへ引き込まれるように、暗いアーケードを抜ける。
およよ、どうしよう、異空間にたどり着いてしまった。
若干、いや、だいぶクリーピー(気味悪い)で、理解しようさえも思えないほどブッとんだ絵たちにウェルカムされた。
居心地は、最高によくない。
しかし、その不気味さとは裏腹に足はずんずんと奥へ奥へと進むのだ。
引き寄せるのは、ベルリンの壁の絵の前で感じたエナジィ。そこにひとはいないのに、確かにだれかがいつかの日になにかを思いながら筆を走らせた存在感たっっぷりの主張。
ベルリンでぶち壊されたのは壁だけではない。無音の絵たちから溢れていたのは既存のルールを、国を、人種を、そういった違いそのものの壁をぶち壊しつづけ、主張し、融合し、新たなものへと生まれ変わりつづけているような静かなるエナジィ。