The motion & The moment. #至福のパイナップル
ArtBy Hiroyuki Toyokawa on
<「革命の里」サンティアゴ・デ・クーバ>
首都ハバナより700km離れたキューバ第二の都市、サンティアゴ・デ・クーバ。
この地は、「革命の里」とも呼ばれている。
その所以は、1953年の7月26日に、
サンティアゴ・デ・クーバにあるモンカダ兵営を襲撃することから、
キューバ革命の火蓋が切られた歴史的な場所だからだ。
この7月26日は現在、キューバの革命記念日とされている。
革命の戦いが起こったサンティアゴ・デ・クーバの現在は、
穏やかなのんびりとした場所だった。
サンティアゴ・デ・クーバは坂が多い。
そして、ハバナ同様に暑い。
デジタルカメラとフィルムカメラ、1リットルの水のペットボトル詰め込んだザック。
6?7キロあるであろうザックを背負えば、のしかかる重みが地味にこたえる。
自分の中に灯る静かなるエナジィは、その重みに比例して熱量を増していく。
<映画のセットのような日常 >
街歩きをしていると、そこでの人々の営みがいちいち興味深い。
坂を登りきった道端で、フルーツを売る露店があった。
オンボロのリアカーを展開した露店だった。
商品の数もままならない。ましてや値札もない。
その露店には数人の人が群がっていた。
少し離れた場所から、様子をうかがってみると、どうやら一人の男性が値段交渉をしているようだった。
数人の野次馬が、値段交渉の一部始終を見届けていた物。
それは、たった一つのパイナップルだった。
商談を終えて、こちらに向かってくる男性にカメラを向けると、
たった今手に入れたパイナップルに、満面の笑みを添えてポーズをしてくれた。
例えば、小さな電子端末で、最新の電子機器を右から左へとスワイプして、気に入った物をボタン一つで買えてしまう世の中。
パイナップルを買っただけで、これだけ嬉しそうにしているおじさんの笑顔を目の当たりにすると、自分には無い大切な何かが垣間見えた。
<キャップをひねれば、創造が広がる>?
街の中心にある公園を覗いてみると、ここにも人だかりが。
一つのテーブルを4人の男性が囲む。
さらに、その4人を大勢の野次馬が囲む。
テーブルの中心では、ドミノが白昼堂々と繰り広げられていた。
勝負師の顔をした壮年が、真剣な顔でゲームに興じていた。
このテーブルの隣では、違うゲームをやっている人たちがいた。
オセロのようなボードゲームなんだが、その駒に驚かされた。
白と黒の駒は、それぞれが何かのリサイクル品だったのだ。
白い駒はおそらくペットボトルの蓋だろう。
側面のギザギザに溜まった垢から、このボードゲームの使用頻度がうかがえる。
あるもので楽しむ。なければ作る。そして今を楽しむ。
とても、とてもシンプルだ。
大切な何かを見せつけられた気がした。
続く。