『No way』
なかなかたどり着かない想い。
冗談じゃなーい!
これは旅につきもののハプニングをひっくるめて曲に詰め込んだ。
予定通りに行かない事なんて旅には多々ある。
ここには代表して強烈に記憶に残るストーリーを三つ記す事にした。
その1
「乗れなかった事件。」
非常にタイトスケジュールな全米ツアー中。
オースティン→(バス)→ダラス→(飛行機)→シカゴ、の移動の際
最初の移動手段であるバスに、指定席を予約済みであるのにどういう訳か定員オーバーで乗れず。
そんな訳で急遽レンタカーでバスを追いかけ約4時間。ようやくダラスに自力で到着。にもかかわらず、どういう訳かチェックインの大行列と担当の強面のおじさんに阻まれ飛行機に乗れず。
空港で一日中キャンセル待ち。
….全然シカゴにたどり着かない。
やっとの思いでたどり着いたシカゴでの滞在時間は約9時間。寒さを感じたのも束の間。
そしてまた一行は、次の場所へ移動するのである。
その2
「なかった事件。」
ロサンゼルス: 予約済みレンタル楽器にクラッシュシンバルが無くライド2枚で乗り切る。
トロント:予約済みレンタル楽器にシンバル類一式が無く会場のスチールの椅子で乗り切る。バラードの途中でチャンチキみたいな合いの手が終始聞こえてくる。
日本 : 出演依頼があった為飛行機で向かったが自分たちの当日になり自分たちの出番は無いと告げられる、二日間蟹のやけ食い。
その3
「痛かった事件。」
カナダのライブ。他のバンドのステージに呼ばれステージにテンション高く上がる。がその際につまずき、すねをザックリ切る。
本人はアドレナリン全開でライブを無事に終え、ステージから降りると同時にメンバーにより救急病院へ運ばれる。あっという間。
真夜中の手術。13針。勲章。
以外にも思い出される事は痛さよりもメンバーみんなの顔。まず私の異変に気がついたメンバーは客席からビリヤードのボールの様にあちこちに散らばった。客席でカメラをまわしていたベーシストの痛そうな顔。袖にはけた瞬間に傷を押さえに駆けつけてくれた鍵盤の子。その後に小さな絆創膏を2つ手に持ってきたドラマー。手術台の上の私にフライドポテトを差し入れたギタリスト。メンバーの迅速な行動力と英語力に助けられているのにもかかわらず思い出すシーンは、なぜか二ヤけてしまう。
数々のトラブルにこりゃあどうしようもない、と笑って次の一歩を考えられる仲間と一緒だから旅を続けられるのだと思う。たくましさは回を重ねる毎に増している。
だからこの曲は、なかなか落ち着く音にたどり着かない旋律にしてみた。
同じモチーフを何度も何度も繰り返す。
どうにかたどり着きたい思いを込めて。