The motion & The moment. #東京から東京へ25時間。
ArtBy Hiroyuki Toyokawa on
<東京から東京へ25時間>
東京に帰る日。
いや、父島も東京か。
父島が東京というのも、本当に便宜的なものでしかない。
乗車率100%以上の通勤電車もない。
下を見ながら蟻のように行進する人たちも見かけない。
これといった閉塞感もないし、なにかに群がる様子もない。
信号はほとんどない。。
いわゆる『東京』ではない。
自然を中心とした『島』が持つ独特の雰囲気で満たされている。
<瞬間が織りなす悠久の時間>
穏やかな天気の中。
時折吹く風が、水面を揺らす。
透き通った水の色は、グリーンのようなブルー。
水深の浅い所では淡く、深い所では濃く。
風に揺れながらグリーンから青へと、ゆらゆらと移ろいゆく。
波打ち際。
珊瑚の欠片で形成された砂浜に、波が寄せる。
近づいて1/4000秒でシャッターを切った。
小さな波でも、砕ける瞬間は躍動的だ。
この島が、長い長い時間を掛けて形成された。
その悠久の時間の中で、1/4000とか1/8000とか、
もっともっと細かい瞬間が織り重なって、現在へと続いている。
自分が生きてる瞬間は、この波が砕ける瞬間くらいに短く、躍動的のかもしれない。
地球や宇宙、自然の時間軸は凄まじい。
出航の時。
客船は数日に1回出航する。
その船を見送る島民たちが、小さな港に三々五々集まってくる。
習慣なのだろうか、どことなくみんな出航の時を楽しみにしているような感じがした。
別れの言葉を叫ぶ人たち。
水際で、それとなく警戒している警察官。
大きく手を振る人たち。
今まさに出航しようとしている船を、ただただ眺める人たち。
それぞれの見送り方があるのだろう。
出航して間もなくすると、何隻ものクルーザーが客船を追いかけてきた。
次から次へと、十数隻のクルーザーが勢い良く追いかけてくる。
「いってらっしゃーい!」「また。来いよー!」と何度も叫びながら。
客船に追いついて並走していると、クルーザに乗った人たちは、
「いってらっしゃーい!」「また。来いよー!」と叫びながら、
次々に海へと飛び込んでいった。
どうか安全に帰ってね。そしてまた遊びに来てね。と願いを込めて。
甲板からその様子を眺めていると、このクルーザーに乗ってる人たちは全く知らないのに、
何故だか胸が熱くなってきた。
島の人の暖かさに。
綿々と受け継がれる、島の暖かさが感じられた。
一人一人の、島を思う静かなるエナジィを。
形にして表現すると、ダイレクトに伝わる。
そんなアナログな感情を、目の当たりにさせられた、
東京都・父島の旅だった。