The motion & The moment.
ArtBy Hiroyuki Toyokawa on
バングラディシュのクルナという港街。
世界有数の人口密度を誇るバングラデシュの第3の都市だ。
交易の中心地として発展してきたクルナの街中では、農産物やら資材などを満載に積んだトラックが、砂煙りを舞い上げ活気よく走る。
働く男の肌は一様に黒光りしていて艶やかだ。
この街から電車に乗ってしばらく行くとインドに繋がる。
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旅をしたのは雨期だった。
一時的な集中豪雨で街が一気に冠水してしまった。
街中に散らばるゴミが排水を妨げ、茶色く淀んだ水面を瞬く間に押し上げていった。
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日本であれば、夕方のニュースの冒頭で大々的に扱われるであろう目の前の惨事は、現地の人にしてみれば年中行事の様な光景なのかもしれない。
ネガティブに捉えているのは、「日本では・・・」という固定概念からくるものだろう。
自分の目には非日常的に映る状況の中でも、リキシャのオヤジはペダルを漕ぎ続けていた。
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ズボンの裾を膝の上までめくり、街に繰り出してみる。
ますます活気づく街の様子がなんともフォトジェニックに映った。
淀んだ水面には生ゴミが浮遊する。
どこかの飲食店で使ったであろうレモンスライスの欠片が、歩みを進める自分の太ももにピタリと貼り付く。
そういえば、雨が降る前に街を散策していて、立ち小便をする男を何人も見掛けたなと。余計なことを思い出してしまった。
彼らの雫は、いま眼下に広がる淀んだプールの一要素となって、自分の足下を漂っているのだと。。
行き交うリキシャにレンズを向けて、華奢で黒光りした車夫の様子を何枚もカメラに収めた。
黒い肌に光る白い歯が、車夫の笑顔をより際立たせていた。
この状況のなかでも、笑顔でペダルを漕ぎ続けるバイタリティに、生きることへの執着を感じた。
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バングラディシュの首都ダッカでは、おもちゃ箱をひっくり返したような、うごめく何かを感じた。
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続く