ナマズと雪 =Fish Nude #10=
ArtBy Takehiko TSUBAKINO on
ナマズがどこで生まれるのかは知りません。正直、稚魚を一度も見たことがありません。これ不思議。成魚は、冬になると湧き水の近くに集まってきます。周りより僅かに水温が高いからでしょう。それを獲るのです。sashimiは大変清らかで、一味唐辛子醤油で食べると美味しいです。
私にとって鯰〈ナマズ〉はウナギ釣りのときの外道〈げどう〉でもありますが、被写体としては別です。ウロコがないと筋肉の動きがよく見えるからです。
〈円山川の鯰。70cmくらい〉
地面を普通に這わせてみました。はい、次に別角度。
〈鯰のエラの辺りを掴む〉
地面で動きまわる鯰を何十枚か撮ったのですが、なんかシックリ来ません。呼吸が強い鯰にとっては、地面に居るくらいでは、まだまだ〈自由〉過ぎたのです。グイグイ動き回ります。ふと、首を掴んで、持ち上げてみる。逃げようとしてシッポを曲げるので、体側に力を込めたシワが入り、ヒレが波打ちます。深い草色と黄褐色の充実し切ったカラダ。小魚だと、手で触るとロクなことがないですが、鯰クラスになると、ちょっと抵抗したときがイイ、ノッてきた!
〈胸元とお腹のアップ! 激写!〉
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ここで一休み。結構満足したんです。長らく会ってなかったナマズに触れたので。
もういいかな、と思った晩に、大雪が降りました。牡丹雪が薄暗くなるころから勢いを増し、「これは積もるな」という降り方。地面が適度に乾き、暗くなるまでに10cmまでくれば、一晩で、30cm強くらいは積もります。
〈夜11時。戸を開けると、無風。〉
顔を撫でた冷気が、ゆったり部屋に這入ってきました。
新しく積もった雪の中に、ナマズがフカッと落ちて、ウネウネと動く。
考えただけで、楽しみでした。
そして翌朝。
?<うむむ。。力強い。>
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この粘るような動きがイイですね。
<はい、ふかッと雪の中。それでも進みます>
〈鯰と淡雪の共演。〉
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手が凍る厳寒の中、ナマズの髭も凍る。ピンと張った腹ビレ、雪が反射して光った体躯に独特の文様、そこに純白の雪がフワッフワッと付く…。good コントラスト!!
手が凍るくらいのほうが、鯰にとっては良いんです。今回は、雪に助けられました。昨日よりもっと満足して家に入り、手を温めました。
〈つづく〉