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レッドブルに勝てなかったBloomが、真正面から戦わずに棚を創って市場3%を取った話
By Silent Energy Inc.[公式] on
経済メディアInc.が、エナジードリンクの新興ブランド「Bloom Nutrition」の小売戦略を取り上げている。二強レッドブルとモンスターに「真正面では勝てない」と早々に見切りをつけたCEOグレッグ・ラヴェッキアが、どの棚を、どんな理屈で口説いたのか。その具体を追った記事だ。
そこに滲むのは、派手な逆転劇ではない。巨人が動けない場所を先に探し当て、地味な交渉を積み上げる——リソースで負ける側が、戦う軸そのものを設計し直したときにだけ生まれる静かな執念である。
Bloom Couldn’t Compete With Red Bull or Monster. This Unexpected Retail Strategy Helped It Win Anyway (Inc.)
では、なぜBloom Nutritionは巨人の足元に食い込めたのか。金でも棚でも勝てない新興ブランドが、二強と同じ土俵をあえて降りたとき、何が起きたのか。数字から順に分解していきましょう。この話、深夜まで語れますよ。
正直に…巨人に真正面から挑むのは、たいてい負けます
まず前提を数字で。エナジードリンク市場は、ひと握りの巨人が握る寡占市場となっています。世界のエナジードリンク市場は2025年に約1,060億ドル規模へ達し、レッドブルとモンスターの二社だけで80%超を占めるとされます。個社の規模も桁が違う。2025年、レッドブルの純売上高は約122億ユーロ(約143億ドル)と過去最高を更新し、次点モンスターのほぼ2倍に達した。そんな環境です。
この二社が強いのは、有名だから…だけではありません。巨大な流通網とブランド資産、そして惜しみないマーケティングとスポンサーシップで視認性を保ち、コンビニやスーパーの一等地の棚を押さえ、衝動買いを刈り取っていく。彼らの堀は「金」と「棚」でできているわけです。ここで後発が同じ武器を握って殴り合えば、資本力の差がそのまま結果になる。少年漫画で言えば、初期装備のまま最終ボスに突っ込むようなものです。
日本でのサントリーさんの場合、棚と金を持った状態だから、殴り合えたと言えるのではないでしょうか。
Bloomが『やらなかった』こと
Bloomの賢さは、勝ち方より先に「戦わない土俵」を決めた点にあります。創業者でCEOのグレッグ・ラヴェッキアは、自社のような新興ブランドがレッドブルやモンスター、セルシウスといった巨大既存ブランドと「数字対数字、真正面から」は戦えないと見切っていた。だから同じKPIで競争しにいかなかった。
これは撤退ではなく、選択です。市場を眺めたとき、Bloomのチームが見たのは、棚がすでにモンスター、レッドブル、セルシウスで埋まった飽和カテゴリだったということ。そこでラヴェッキアは、いまの商品群に満たされていない顧客は誰か、を探しにいく。F1やeスポーツ的なマス露出、カフェイン量や味の直接対決——巨人が最強を誇る軸は、あえて主戦場にしない。相手と非対称なリソースしか持たないなら、同じ物差しで戦わない判断こそ合理的なんです(私たちもそう信じているわけで)
勝ち筋の解剖:需要を『別の生活文脈』から連れてくる
Bloomは、既存のエナジー需要を奪いにいったのではありません。もともと別の場所にいた顧客を、エナジードリンクの棚まで連れてきた。ここが面白いところです。
そもそもBloomはエナジードリンクの会社として生まれていません。2019年、レガシーなサプリブランドの「マッチョな美学」から疎外されたと感じる女性向けに、自己資金でつくったグリーンズパウダーが出発点でした。そこから積極的な小売展開とクリエイター起点のマーケティングで、多カテゴリのプラットフォームへ育っていく。需要の源泉は、ジムやモータースポーツではなく、ウェルネスとSNSだったわけです。
この創出装置が、恐ろしく効いた。2021年以降、同社は5,600人のインフルエンサーと組み、彼らが生んだ再生数は約120億回。この施策だけでマーケティング予算の約75%を占めます。結果、飲料ラインが本業を追い抜いた。2025年には飲料が本来の栄養補助製品を上回り、Bloom Sparkling Energyが売上の60%を牽引する。ラヴェッキア自身、Bloomはエナジードリンク市場の約3%を取ったと見積もっています。二強80%の隣で、外から連れてきた需要による3%。この3%は、質が違うんです。
小売の非対称性——巨人が動けない棚を先に取る
ここが核心です。Bloomは棚の争奪戦を、巨人が最適化しきった場所ではなく、その「外側」で仕掛けました。
スピードも桁違いでした。炭酸エナジードリンクの発売から2年以内に、6万を超える店舗で棚を確保している。問題は、どこの棚か。ラヴェッキアが狙ったのは意外な場所でした。全国展開の焦点を当てたのは、女性客がふだん買い物をしない場所——コンビニエンスストアだったのです。
ここで交渉の理屈が効いてきます。売上ボリュームでは巨人に勝てない。だから別の価値提案をした。競合のような販売量を約束できないラヴェッキアは、チェーンにこう売り込んだ。Bloomの客は、その店にもともと通っていなかった「上乗せの新規客」だ、と。既存のエナジー客を食い合うのではなく、店に新しい客足を持ち込む。チェーン側にとって、それは棚を空ける理由になる。
狙う店の選び方まで具体的でした。その女性客を見つけるため、Bloomはバッキーズのようなトイレの清潔さで知られる幹線道路沿いの休憩所から始め、そこから7-ElevenやサークルK、レーストラックといった大手チェーンへ広げていく。結果、コンビニチェーンは今日、Targetやウォルマートも含む小売網の約半分を占めています。巨人が回転率で磨き上げた棚とは、別軸の棚を先に押さえたわけです。巨人はコスト構造上、低回転の新規棚をわざわざ取りにいく動機が薄い。この非対称性が、後発の入り口になる。
搦め手で本丸を落とす——グローバルに見る同じ型
この「軸をずらして巨大市場を切り崩す」やり方は、実はモンスター自身が通ってきた道でもあります。歴史は韻を踏む。
モンスターは、レッドブルの土俵に乗りませんでした。レッドブルのスリムでプレミアムな欧州的デザインを模倣する代わりに、真逆へ振り切る。大きく、大胆で、攻撃的なまでにアメリカ的な、まったく別の視覚的・物理的アイデンティティを作った。缶を「大きくする」という一見ばかげた逆張りで、別の顧客を掴んだのです。まさに搦め手で本丸を削る型。
重要なのは、これが根性論ではなく再現できる形だということ。飽和市場では正面が最も混み合い、巨人が最も強い。実際、中堅の挑戦者たちはインフルエンサーマーケティングやD2Cチャネルに転じ、店舗中心の競合の3倍高い顧客生涯価値を生んでいる、という分析もあります。軸をずらすのは、単なる逃げではない。収益の質そのものを変える手なんです。
中小・マイクロカンパニー(我々のような…)が盗むべき3つの型
では、金も棚も持たない側が真似できる形とは?
第一に、巨人と同じKPIで戦わない。「数字対数字、真正面から」勝てないと最初に認めることが起点になる。カフェイン量でも広告投下量でも、相手が最強な指標で殴り合わない。
第二に、需要をカテゴリの外から連れてくる。Bloomが「いまの商品に満たされていない顧客は誰か」を探し、女性客は缶入りの少し体に良い処方では満たされていないと見抜いたように、既存客の奪い合いではなく、別の生活文脈にいる非顧客を掘る。
第三に、巨人がすぐには動けないチャネルや棚を先に押さえる。女性客がふだん来ない場所をあえて選び、「上乗せの新規客を連れてくる」という別軸の価値提案で棚を口説く。回転率で最適化された巨人の意思決定が、逆に足枷になる領域を突くわけです。
おっと…私たちの作戦を漏らしてしまった…(なんて)

結論:リソースの差は、戦う軸で無効化を図る
数字を並べて見えてくるのは、たった一点です。リソースの差そのものが敗北を決めるのではない。戦う軸の設計ミスが、敗北を決める。
Bloomは2019年、自己資金で始まりました。レガシーな「ジムブロ」向けサプリが残した空白を、臨床的な有効性と親しみやすいフェミニン寄りのデザインで埋めたブランドです。派手な即効性ではなく、非対称性を一つずつ突く地味な積み重ねが、二強の隣の3%を作った。持っている側に挑む側が学べるのは、たぶんここでしょう。勝負する市場軸を、自分の手で引き直せるかどうか。この問い、深夜のバーで延々と語れますよ。
巨人と同じ土俵を降り、動けない棚を一つずつ突いて市場を切り拓いた、後発の静かな設計力。