うつくしきふつう=城崎にて=
ArtBy Naho Inoue on
あまりにも有名なその本の主人公のような、山手線の事故からの養生では決してないが、かつて半年間お世話になった町、なりまくった町、
城崎にて。
あれから毎年訪ねているが、ローカル電車を降りると変わらず城崎を真っ先に感じられるピリッと冷える気温に、あたたかい温泉とコーヒー(私にとっては)、あたたかすぎるひとたちで成り立っている。
その名の通り時代を超えて人に暖と緩を与えてきた古き良き温泉街。
心地よくゆられる垂れ柳、を水面に映し町の軸を担う河、にアーチがかった石橋。その軸沿いにどっしりと軒を連ねる旅館や商店といった完璧なまでの和風。浴衣姿で華やかに彩られ、静かで緩やかに流れる時間の中でカラコロという下駄の音を耳にしてしまえばすっかり極上の休息モードへと誘われる。
あまりにも有名な観光地が地元である人びとは。
「おかえり?!!!!よう来はったなぁ!!!」
たった半年しかいなかった私に対して、会う人会う人「おかえり」をくれる。
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老舗旅館の社長と女将はじめご家族は、わたしにとってはお父さんとお母さんと兄妹であり、いつでも大きなハグと、夜にはとびっきりの食卓を囲ませてくれる。
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二年前は話せなかったちびっこは手をつなぎながら「こどもえんできのこのうたうたってなぁ」と教えてくれた。
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写真を撮っていると、「撮りますよ!」とスーパー帰りのお母さんの明るい声。
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急な雨が降れば傘を貸してくれるレストランのおにいさん。
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杖をついたおばちゃんとの一年ぶりの会話は、「今日のお湯は熱く感じた」ということ。
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毎晩くだらない話で盛り上がった酔っぱらい常連おじさんの手みやげバラエティの行き着いた先はダイエットサプリメント。
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おもてなしのプロたちとユニークな地元民に溢れたのその小さな町には、仕事用のそれではなく、身についているまごころがあるのだ。
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共にその狭く色濃い観光地で育ち、世界中からの人々に安らぎを提供してきた団結力とおもてなし力。受け継がれる世代の中で、古き良きを引き継ぎながら新しいものを取り入れるその力強さからは目が離せなくなり、羨ましくもなるほどだ。
しかしそれは彼らにとっては日常。まごころの中で生きているからこそ、彼らからのようこそは、懐に入り込んでくるものがあるのだろう。おかえりなんて最高のありがたい言葉だ。
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その活き活きとしていて、大きな愛のエナジィのことをまた恋しくなり、私は来年も「ただいま」と言いたくてここへ戻ってくるだろう。