The motion & The moment. #民宿とエクストラマネー
ArtBy Hiroyuki Toyokawa on
?エクストラマネーは後出しジャンケン
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「うちは15CUC でエアコンもついてるぞ!Okだろ? 。。なぁ、OKだろ!!」
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ハバナからの長距離バスは、街の中心にあるターミナルへと到着した。
ターミナルを出ると、民宿の営業がこぞって乗客へと押し寄せて来た。
必死に営業を仕掛けるのは、おそらくこのやりとりが、彼らの生計を支えているからだろう。
バスを降りて目にしたのは、外貨を稼ぐ好機を逃してたまるかという、剥き出しのエナジィだった。
何人かと交渉をすると、1泊15ドルくらいという相場が見えた。
人相の悪い男性二人組みと交渉をした結果、彼らの紹介する民宿に落ち着いた。
彼らが運転するタクシーに乗り、民宿へと向かう。
カサ・パティクラルと呼ばれる民宿は、部屋を持て余している人が、国の認可を得て旅行者にその部屋を貸し出すことができる。
玄関には錨のマークの看板を掲げていて、これが国から認可を受けている証となる。
連れてこられた民宿の中は、家具やら壁の色使いが多少うるさいが、クーラー、冷蔵庫、風呂トイレもすべて備わっていて完璧だった。
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部屋の内観チェックもひと段落した頃、ロビーにはここまで連れてきてくれた人相の悪いお兄さん2人組がまだ居座っていた。
目が合うとすかさず彼らは「金をくれ!」と。
そういえば彼らに、ここまでの運賃を払っていなかった。
部屋のチェックが終わるまで、彼らは律儀に待っていてくれたのだ。
タクシー運賃を渡して「グラシアス!」と言うと、彼らは納得いかない様子だった。
どうやら、ここの民宿の紹介料を更によこせという腹らしい。
東南アジアなどでよく見受けられる、紹介料的なエクストラマネーをせびるやり方は万国共通で、ここキューバでも常套手段のようだった。
昼過ぎのサンタクララの太陽は、今日もギラギラと照りつけていた。
この暑さの中、彼らは自分のために動いてくれたんだ。
そんな適当な理由を自分の中にこじ付け、ふわっと湧いた憤りをすっとこらえて、幾ばくかのエクストラマネーを渡した。
彼らは満足げに「グラシアス!」と言って、わさわさと出て行った。
静けさを取り戻したロビーには、近所のおばちゃん達が井戸端会議をする声が微かに聞こえてきた。
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物は無くとも身だしなみは欠かさない
チェゲバラの霊廟に向う途中にちょっとした公園があった。
広場の真ん中では靴磨きをしている壮年男性を見掛けた。
カメラを持って近づくと、耳かきのポーズ。
その男性にとっては、「さぁ、撮れ。」という合図だったのだろう。
その合図に呼応してパチリ。
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サンタクララの街を歩いていると小学校の前を通りすがった。
鉄格子の向こうに見える子供達は給食の最中だった。
給食の傍ら、自己主張も欠かさない。
あずき色の制服と青いスカーフがとてもお洒落だった。
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サンタクララのフェロカリル駅。
唯一の駅にもかかわらず慌ただしくも無く、のんびりした空気が駅舎には流れていた。
ホームのベンチで腰掛けていた男性に「写真を撮っていい?」と尋ねる。
すると男性は、色あせた赤い帽子をキッチリかぶり直し、手に持っていた書類をしゃんと持ち直した。
「よし、いいぞ!」という合図で目を凛々しく見開いた。
写真を撮ることが割と特別なことなのかもしれない。
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キューバにおいて、ピザはおやつの様な扱いかもしれない。
店舗を構えず自宅の窓を開いて「PIZZA」の看板を掲げれば、やがてそこが店舗となる。
一枚50円〜100円で直径15cmくらいのピザが買える。
フルーツジュース屋、アイスクリーム屋なども見かけるが、やはり人気があるのはピザ屋だった。
暑い中で、汗をかきながら熱々のピザを食べる。
キューバにおけるアクティビティの一つだ。
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物がなくても、どこか豊かに感じる。
表情にしろ、雰囲気にしろ。
内に秘める静かなるエナジィを探し、
別の都市に歩みを進める。。
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続く。?
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