うつくしきふつう=茶ばみヒッピービレッジPai=
ArtBy Naho Inoue on
その村は、タイ北部チェンマイからマイクロバスに詰め込まれ12時間、舗装されていないdirt roadをひたすら山の奥へ進んでいくとある。(激しすぎる揺れとくねり道に車内では身体をいかにぶつけずに寝られるか、吐き気を忘れさせるかがポイントだ)
枯れ木色もしくは泥色というのだろうか、水が足りすぎているような足りてなさすぎるような空気にそれぞれのカラーが茶ばんで映る村、パイ。
泥色の濁流に、幾年も天日干され頼りなく色あせたバンブー橋。人間ひとり歩くのがやっとなため、対岸からの毛の堅そうな土色のお犬様をお待ちしてやっとそろそろと渡る。
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干涸びた田んぼの上にある宿もパイ”らしさ”が詰まっていた。まとわりついた泥を洗い流すシャワーはもちろんお湯は出ず、トイレを明ければヘビがいて、なにもしのげない隙間だらけの部屋(小屋もとい草木)では、蚊帳というバリア越しに飛び回る虫たちに震えた。
そんな修行のような村にひとが魅了されるのはなんでだろう。
独特なアングラ感はニューヨークの外れのそれではなく、タイ風。
やったことリスト
・125ccバイクを借り、山々を探検する
以上。
2人乗りのなんともエンジン音の軽いそのバイクは、ちょっとしっかりした自転車やんくらいの細いタイヤで、急な坂道では後ろの友達は降りないと上れず、そこに容赦なく襲ってくるdirt road。気を抜くと大事故になりかねない山道で運転しながら、「こんな山奥で死ぬのはいやだ」と全神経を集中させていた。
なんで魅了されるのだろう
ファンシーなお店や、コンビニさえも記憶にないし、ファンシーな旅行者も見ていない。
気持ちいいほど観光地化されていない。
色味さえもなんにもないその村には、それでも魅了された世界中のひとびとがパイ色になって居座っていた。
なんで魅了されるのだろう
探検中にたどり着いた岩滝で地元の褐色のこどもたちに滑り飛び込みを教えてもらった。
80℃の源泉の中腹では数年ぶりの天然温泉に浸かった。
一歩踏み外せば命を落とすような岩場を超えると燃えるような夕陽に出逢って
宿へ帰れば薄いビールを片手にハンモックで穏やかな時間に身を委ねる
あぁ、そこに戻るのか。
飾りもなにもないその村では、野生の中で生命そのもののとてつもなくたくましいエナジィと向き合い直せるのだ。