The motion & The moment. 世界最大の仏教遺跡群・バガン
ArtBy Hiroyuki Toyokawa on
<世界最大の仏教遺跡群>
首都ヤンゴンから深夜バスに乗り、バガンという都市へ向かった。
ここには世界最大の仏教遺跡群がある。
有名なカンボジアのアンコールワットや、インドネシアのポロプドゥールとともに世界三大仏教遺跡群とされている。
乗り込んだ深夜バスは実に快適で、添乗員まで乗り込んで軽食などのサービスも施してくれた。
<おとぎの国のような現実世界>
バガンには明け方に着いた。
まだ暗いうちに到着したもんだから、辺りに何があるかわからない。
宿泊する宿の名を頼りに、馬車に乗り込んだ。
この街での輸送手段は、馬車が一般的だ。
バガン遺跡は、仏教遺跡の中では世界最大と言われているが、世界遺産としては認定されていない。
遺跡の修復に近代的な建材を使用して修復したり、軍事政権が遺跡の近くにゴルフコースを作ったなどの理由で世界遺産の登録には至らなかったそうだ。
しかし、そんな遺跡も地元の人からすれば、遺跡というよりも信仰の対象となっており、
日常的にこの遺跡の仏像にお参りにやってくる。
その為か、遺跡は全体的に保存状態が良かった。
遺跡の中で、静かに絵を描く青年を見かけた。
これまでに描いた絵を自分の周りに並べ、観光にやってきた人にお土産として売っているようだ。
しかし青年は、執拗に売る事はせずに、黙々と筆を動かす事に集中していた。
彼のお父さんも絵描きだったそうだ。だから自分も絵を描く事が大好きなんだという。
細かく繊細な線を、迷う事なくキャンバスの上に描いていく。
しばらく彼のそばで、彼の静かなるエナジィがキャンバスに描かれていくのを眺めていた。
去り際、「ありがとう」という声を掛けたが、彼は「バイバイ」と言っただけで、その視線はキャンバスから離れる事はなかった。
遺跡は大小様々のもので形成され、白や赤褐色のものがあった。
仏塔の数は3000を超えるらしい。
遺跡によっては、管理が行き届いてたくさんの地元の人が参拝に押し寄せていた。
のんびりとした空気が流れるバガン遺跡。
野良猫も遺跡の前でのんびりとうたた寝。
<地平線に沈むバガンのサンセット>
夕暮れ時、
ゲストハウスの主人に、サンセットを見るのにベストな場所を聞いて、
バガンを一望できる遺跡に登り、サンセットの時を待った。
太陽が地平線に沈み始めると、徐々に空が赤らんできた。
前方に広がるのは世界最大の仏教遺跡群。
ゲームや映画のシーンにでてきそうな幻想的な風景に息をのむ。
静かに、静かに太陽が地平線へと沈んでいく。
風の音だけが耳をかすめる。
世界遺産にならなくても、この遺跡は地元の人たちの篤い信仰心で守られていくのだと感じた。