The motion & The moment. #オガサワラ・レイトショウ
ArtBy Hiroyuki Toyokawa on
<父島劇場の公演は日没開演>
小笠原の主役は紛れもなく自然だ。
海も山も、動物も植物も、昼も夜も。
陽の光に照らされた小笠原の海は、吸い込まれそうなグラデーションの青を演出する。
ジャングルの様に群生する亜熱帯の植物たちは、陽の光に照らされ、さらに勢い良く各々の緑を輝かせる。
陽が沈んだ島では、昼には見られない顔がある。
もちろん主役は自然だ。
チチジマ・レイトショウを見に、夜の島を徘徊しに行こう。
<オガサワラ・レイトショウ>
父島には、そこかしこに天然記念物が生息している。
陽が沈み、夜の帳が下りた頃。
月の光がポツンと照らされた空に、大きな羽を広げて滑空する『オガサワラオオコウモリ』が見えた。
オガサワラオオコウモリは天然記念物としてだけではなく、種の保存法により国内希少野生動植物種にも指定されている。
島の植物園に行くと、オガサワラオオコウモリが果実を食べにやってきた。
ガサガサと音を立てて、茂みの中で果実を探していた。
あたりを懐中電灯で照らしながら見回すと、バナナの花が咲いていた。
初めて見るその姿は、妖艶で舞台で華やぐ女優の様な風貌でした。
道端にはオオヒキガエル。
サイズもさることながら、体を覆うボツボツが厳しい。
本来はサトウキビ畑の害虫駆除の為に、海外から移入された種だったが、
体内に毒を持つことや、貴重な在来種を食べてしまうことで、
特定外来生物にしてされ、駆除の対象となっている。
真っ暗な道を、心もとない懐中電灯の光を頼りに進んで行く。
脇に目をやると、昼間とは違った植物たちの生き生きとした姿がそこにはあった。
さらに海辺に足を運んでみる。
夜の海辺は真っ暗で、遠くにポツンと灯台の灯りが見える。
懐中電灯で足元を照らしながら、ゴツゴツした石の海岸を歩くと、
そこにも夜の海辺を闊歩する生き物がいた。
ミナミイワガニ。
ムラサキオカヤドカリ(天然記念物)
誰かがペイントした貝殻を棲家にしている。
これでは、目立ってしょうがない。
いや、むしろ天然記念物だから、こっちの方が人目について、踏まれないで済むのかもしれない。
サイケデリックなペイントがちょっと滑稽にみえるが、愛着を持てる風貌だ。
さらに、ムラサキオカヤドカリ。
こちらもペイントされた貝殻を棲家としたヤドカリ。
漫画のキャラクターみたいでかわいい。
なかなか警戒心が強くて、近くによると貝殻に収まってしまってピクリとも動かない。
夜に活動する動植物が、こんなにも面白いとは思わなかった。
彼らが活動する森の中に、人間はそっとお邪魔させていただく。
静まり返った空間で、活発にうごめく静かなるエナジィ。
続く。