The motion & The moment. #湖上の静かなるエナジィ
ArtBy Hiroyuki Toyokawa on
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<湖上の街>
ミャンマー・マンダレーから南下して、インレー湖にやってきた。
インレー湖には水上に住む民族がいる。
主な交通手段は船を利用し、木と竹で出来た簡素な家で生活をしている。
舳と船尾が鋭く尖った船を巧みなバランスで、器用に操っていた。
インレー湖散策は、もっぱら観光コースになっている。
”フレー”と呼ばれる薄っぺらい船を巧みに操り、湖底から藻をすくっている。
船が今にも転覆しそうだった。
インレー湖の観光用のイメージには必ずと言っていいほど出てくるこのポーズ。
釣鐘状の網を使った伏せ網。
この網で湖底をかき回して、浮いてきた魚を捕獲するらしい。
コイやフナ、ナマズ、ドジョウの類が採れるそうだ。
しかしこのポーズは既にパフォーマンスと化しており、一連の動作を終えるや否や、こちらのボートに向かってきては「ワンダラー、ワンダラー」とチップをせびってきたのには少し興ざめした。
<綿々と伝わる静かなるエナジィ>
水上住宅では織物が織られていた。
インレー湖に群生している蓮の茎から繊維を取り出し、少しずつ縒りながら一本の糸にしていく。
1ヤードの布地を作るのに、蓮の茎が11000本が必要だという。
それゆえに希少価値も高く、多くは出回らないのだそうだ。
この日も、自分ら観光客のために一連の作業を見せてくれた。
綿々と伝わる技術には無駄な動きがなく、老婆の手に吸い付くように、蓮の茎から取り出された細い繊維がやがて生成りの糸へと紡がれていく。
その老婆の手には、年輪のような皺がたくさん入っていた。
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糸は染色され、そして機織器により布地へと姿を変えていく。
心地よい機織りの音は、小気味よくリズミカルに室内に響いていた。
湖上を生活の場として選んだが故に、蓮から糸を作り、織物として完成させていったのだろうか。
綿々と語り継がれる伝統工芸に注がれる静かなるエナジィ。
続く。