鮎、鮎、鮎、愛。 =Fish Nude #9=
ArtBy Takehiko TSUBAKINO on
<鮎>
〈鮎〉という字は、瓢鮎図という書画で分かるように昔はナマズのことで、中国では今でもナマズを指しています。そもそも漢字は元を辿ればただのアテ字だったり、書き間違いもあるので、最初は誰かが間違えたんだと思います。
ただ、その〈あゆ〉という柔らかな音声は変わらない。〈あゆ〉って呼んでみてください。唇も舌も接しないSexy発音。名は体を現わします。やっぱり日本人にとって、生来女性的な魚と認識されて来たのだと思います。次は鮎、鮎、鮎、鮎、と念仏のように唱えてみてください。気づいたら愛、に変わっています。あまりに違和感のある呼び名は人間〈じんかん〉に普及しませんから、とても愛されてルンです。あゆ、という愛称の女性もおられるくらいですから。
次にその姿。ウロコは大変細かくて、最初から服を着ていない感じ、白い唇に淡いピンクの口内。見た目にも文句ナシ、あと魚なのにハッキリした体臭があるんです。香魚と云われるくらいですから。石についた藻を喰べているせいだと言われていますが、ホントにそうでしょうか。ほかにも草喰べてる魚はいると思うので、疑っています。フェロモンか何かじゃないですか? 香水作ってみましょうかね…!
〈円山川支流 佐中川で投網に掛かった鮎。8月の太陽の下で。悶絶写真。〉
これは、浅瀬で投網に掛かったのを、網から外さずに撮っています。私の『針や網を外さないシリーズ』の一環です 笑。
特にこの鮎の姿は、昔から何となく鮎の最も美しい瞬間として記憶にあったもので、これを全国の皆様に見せたくてfish nudeを始めたみたいなものです。なかなか鮎でこれを超えるものを思いつきません。
ところで魚を捕まえようと川の中に潜りますと、オイカワとかウグイなどほかの雑魚の川魚は自由奔放に泳いでおり、とてもモリで突けません。人間が来るとサッサと逃げてしまうのですが、アユだけは縄張りがあり、同じところをぐるぐる回ってますので、わりと簡単に獲れてしまうんです。川の上から見てても、泳ぎ方が違うからすぐに鮎だと分かってしまいます。子供の頃、私が鮎を獲るのをたまたま観光客らしき団体の方々が見ていて、喝采を浴びたことがありましたが、ホントは一番捕まえやすい魚を獲っただけです! 人生こんなものなのでしょうか 笑。何にせよ鮎はちょっと賢い故に…すぐ捕まっちゃって…刹那にセツナイ。それをサッとブツ切りにしたのがこれです 笑。
〈鮎の背越し〉
酢醤油につけて食べます。あんまり綺麗に並べるよりは、ガサッと盛りつけた方がこの野趣に合ってますね。もちろん普通に皮をとって刺身にもするのですが、鮎は骨が元々柔らかい。そのまま食べてる感があってこのほうが好きです。
〈つづく〉