うつくしきふつう=地下と空中、ときどきバイク。Cappadocia,Turkey=
ArtBy Naho Inoue on
青い守り神
モグラが走りまくったような、穴っぽこだらけで岩色の山々。見守るように、目玉模様のブルーのガラスはいく先々にあった。魔除けだとか守り神だとかと言われているそれらの重たそうに揺れる様は、祈りだとか想いがずっしりと詰まっているように見えた。
穴っぽこ。このあたりは地下都市が発達していたという。栄華なものではなく、戦から逃れるためのシェルター。地下100m程もあるシェルター。暑く乾燥した外と打って変わり、ひんやりとしっとりとする地中。鳥肌は寒さだけのせいではない気がして、1秒でもはやく地上へ出たかった。人は何万人、家畜もつめこみ、学校からワイン醸造所まであったそのシェルター都市は、生死の境目の中、ひとびとがひっそりと必死でエナジィと希望を消さないように、確かに存在していたのであろう。
やっとでれた地上はいつもより優しくカラフルに見え、ゆったりとゆれる絨毯が穏やかなイマを感じさせてくれた。
”朝日を迎えにいく”
貸し出してくれたブランケットに包まり、半分寝ながら最高においしい簡易コーヒーで迎えた濃紺の朝。わたしと同様、まだしっかりと起きていない朝をこれから”迎えに”いく。
轟音を伴う超迫力の炎に想像より圧倒的に大きい布。熱風でどんどん膨らんで”起きだした”。
気球に乗るのだ。
カッパドキアといえば、という定番の体験だが、やっぱり気球に乗って、空を飛ぶということは純粋にとっておきの体験。そのわくわくを最高潮にさせたのはパイロットのおじさんの言葉。
「ぼくらはこれから、空に昇るだろう?もうじき日の出だけども、まだ地上のひとたちには見えない。ぼくらは太陽より高いところにいる。だからぼくらはこの瞬間を、朝日を迎えにいくって言ってるんだ。」
上昇してからは、言葉はいらなかった。1時間にわたる地上1000mの空中散歩は、歴史を刻み続けながらそこに変わらず存在している大地の重みと広大さを感じ、迎えにいってやっと起きた朝日がそのうつくしい世界を黄金色に包み込んでいた。
太陽より早起きをしたその日はとても長く、地上に戻ってからは、ようやっと地下でも空でもない”いつもの”視点の大地を散策しにいった。あまりにも大きなエナジィに触れたあとだからか、いてもたってもいられなくなり、カタカタ頼りないボロバイクをフルスロットルにし、ちっぽけだが確かに存在する自身のエナジィを体感するように風を受けひたすら駆け回った。