「来たままの姿で」10億ドルの美術館は、最上階で家庭料理を極める
By Silent Energy Inc.[公式] on
米料理誌ボナペティが、ジョージ・ルーカスの美術館の最上階にあるレストラン「スカイウォーカー・グリル」を訪ねたレビュー。建設費10億ドル超の建物で出てくるのは、チキンテンダーやピッグ・イン・ブランケットといった、アメリカの定番の家庭料理だ。
面白いのは、親しみやすさのために注がれた手間の量である。チップスやマスタードを店でつくり、椅子の座り心地や音の響きまで考え抜く。「誰もが歓迎される場所」という創設者の考えが、皿と部屋の両方にどう表れているのかを読みたい。
Skywalker Grill at the Lucas Museum of Narrative Art (Bon Appétit)
元記事を読む:
https://www.bonappetit.com/story/lucas-museum-restaurant-skywalker-grill

ロサンゼルスに新しくできたルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブ・アート。建設費は10億ドルを超える。その最上階に、レストラン「スカイウォーカー・グリル」がある。
窓の外にはロサンゼルスの街並みが広がる。内装は贅沢だ。泡のソースや500ドルのコースが出てきそうな店である。だがメニューに並ぶのは、ほうれん草とアーティチョークのディップ、グリルしたサーモン、チキンテンダー。アメリカ人なら誰でも知っている料理だ。米料理誌ボナペティが、この店を訪ねている。
「来たままの姿で」
美術館を創設したのは、映画監督のジョージ・ルーカスと、妻で実業家のメロディ・ホブソンだ。掲げた考えは、誰もが歓迎されていると感じられる場所にすること。
館内の多くの空間は、チケットなしで入れる。17歳未満と、美術館と同じ郵便番号の地域に住む人は入館無料。ロビーのカフェには2ドルのグリルドチーズがある。
レストランの予約ページに書かれたドレスコードは短い。「Come as you are. Stay for the experience.」来たままの姿で来て、体験を楽しんでほしい。それだけだ。
メニューを組んだのは、美術館の料理ディレクター、ディエゴ・カルドーゾ。
料理は親しみやすい。手間のかけ方が違う。
ディップに添える波形のポテトチップスは店でつくる。サーモンにはハチミツと味噌のグレーズを塗る。チキンテンダーには、キャビアをのせたランチドレッシングがたっぷり付く。
評者が人生でいちばんと書いたのが、ピッグ・イン・ブランケットだ。ソーセージをパイ生地で巻いて焼く、パーティーの定番である。ここでは和牛のホットドッグを、バターの香るパイ生地で包む。エブリシング・ベーグルのシーズニングをふり、粒マスタードを添える。そのマスタードも店の手づくりだ。
シーザーサラダは、葉の一枚一枚にガーリックの効いたドレッシングが絡む。マカロニチーズは貝殻形のパスタで、副菜から主菜に格上げすべきだと評されるほどクリーミーだ。鶏と野生キノコのクレープは、とうに閉店したチェーン「マジック・パン」にあった、ルーカスの好物へのオマージュになっている。
全部が当たりではない。ズッキーニなどを使った野菜のパスタは、機内食のようだった。芽キャベツはしんなりと水っぽかった。評者はそこも書いている。

座り心地と音にかける手間
店内に直角は一つもない。壁はうねり、天井は高い。家具はすべて特注だ。
ベルベットの椅子は背中をしっかり支える。黒い大理石のテーブルは間隔が広く、隣の会話はほとんど聞こえない。波のような形のバンケット席のおかげで、どの一角も個室のように感じられる。
音への配慮もある。テーブルの下にはフェルト。壁や天井には、音を吸う左官材を多く使った。2つ隣のテーブルで幼児が走り回っていても、気にならないという。
多用されたチェリー材は、年月とともに味わいが出ることで知られる。自分より長く残る場所を建てたい。ルーカスのその願いの表れだと、記事は書く。
スター・ウォーズは、さりげなく
店はスター・ウォーズをテーマにしていない。それでも小さな目配せがある。
カーブしたバーは、銀箔で覆った鋳造ガラスの梁でできている。夜に灯りが入ると、宇宙のような光を帯びる。個室のシャンデリアは、宇宙にある特定の塵の雲をモデルにした。
いちばん分かりやすいオマージュは、客のほうだ。自慢のスター・ウォーズTシャツを着て来る人がいる。
年内、2人席の空きはゼロ
高い料理もある。ブルークラブのクラブケーキが35ドル、ロブスターサラダが52ドル。38ドルの和牛バーガーには、ルーカスのスカイウォーカー・ランチで草を食べて育った牛を使う。量は多い。周りのテーブルでは、食べきれなかった分を箱に詰めて持ち帰っていた。
ロサンゼルスでは、美術館のレストランが目的地になりつつある。ハマー美術館にはデヴィッド・タニスとアリス・ウォーターズの「Lulu」。アカデミー映画博物館には1万平方フィートの「Fanny’s」。LACMAにはエレウォンのカフェがある。
スカイウォーカー・グリルは9月下旬に開店した。予約ページによれば、年内に空いている2人席は一つもない。
料理ディレクターのカルドーゾが、誰もが知る家庭料理をチップスやマスタードまで店で手づくりし、磨き上げている。