The motion & The moment #陽射しと音楽とエナジィ
ArtBy Hiroyuki Toyokawa on
朝からラム酒で酔いつぶれようがそれは自由だ
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キューバ革命の英雄、チェ・ゲバラが眠る街 ”サンタクララ”。
いわゆる観光をする場所はほとんど無いらしく、
ここに泊まっていく旅行者は少ないようだ。
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サンタクララにもたくさんの人が生活をしているわけで、
その人たちから発するエネルギーが街の雰囲気を作り出す。
観光はそこそこに、サンタクララの人たちの静かなるエナジィを捕らえに繰り出そう。
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サンタクララは、ハバナに比べれば遥かにのんびりとした街だ。
ランドマークのレオンシオ・ビダル公園を中心に街が広がっている。
陽射しはとても鋭く、この公園の木陰で地元の人は涼を取る。
直射日光の雨の中、傘を差して歩く人がいた。
殴りつける強い陽射しの雨は、より濃い影を残していった。
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陽射しが強いもんだから、みんな休み休み。
仕事しながら休んで。休みながら仕事して。
日陰に腰を下ろして、通りを行き交う人やら車やら場所を、右から左へと眺めている。
そうやって店番をしながら1日が過ぎていく。
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街を歩いていると、配給所を見掛けた。
社会主義国家のキューバには、配給制度がある。
家族一人につき米が何キロ、タバコが何本、砂糖が何キロ。
決まった数量があるらしいが、もはや配給だけでは生活はできないようで、
みんなそれぞれ副職をして、生計を立てているようだ。
朝からラム酒に酔いつぶれてもよし、外国人観光客相手に外貨を稼ぐもよし。
それはもちろん自由だ。
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楽器の音が聞こえてきた。
遮光ガラスの扉の向こうで、楽器の練習が行われていた。
リハーサルスタジオなどない。
楽器を持ち寄り、メンバーが集まればどこででも練習はできるのだろう。
一つ一つ音を確かめながら、密度の濃い空間から紡ぎ出される静かなるエナジィ。
音を捕らえる感覚やリズムを感じ取る感覚は、潜在的な感覚なのだろう。
生まれ持った感性と地道な努力を糧に、やがて世界へと飛び出していくのだろう。
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やがて陽が傾き、空が夕暮れの準備をし始める頃、ランドマークのレオンシオ・ビダル公園に戻ってきた。
公園の中の小さな街灯がオレンジ色に優しく灯る。
ベンチに腰掛けていた老人に片言のスペイン語で「写真を撮ってもいい?」と問いかける。
「気にするな!」という様なジェスチャーで返してくれた。
陽が落ちた園内は、写真を撮るには非常に暗い。
脇を固め、30分の1秒のシャッターをゆっくり押した。
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今回の旅にはチェキを持ってきた。
写真仲間が待たせてくれたものだ。
写真を撮らせてもらったお礼に、その場で渡せてなおかつ喜ばれる優れものだ。
その老人にも撮影した写真を渡してあげた。
老人は、自分が写った写真をしばらく眺めていた。
そして、僕の顔と自分の写った写真を交互に見て嬉しそうにしていた。
感動もひとしきり過ぎた後、老人はポケットから大事そうに何かを出した。
ティッシュに包まれたその中身は、身分証の様なモノや何かのカード類だった。
今撮影されたばかりの、老人の肖像写真は身分証やそれらの大事なモノと一?にそっと重ねられ、
また大切そうにティッシュに包まれていった。
老人の写った肖像写真は、きっとこの先何年も大事にしてもらえるんだなと感じた。
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穏やかに、緩やかにキューバンタイムが流れる。。
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続く。?