The motion & The moment #常夏の国の祭りは いつでも夏祭り
ArtBy Hiroyuki Toyokawa on
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<常夏の国の祭りは いつでも夏祭り>
キューバ第2の都市、サンティアゴ・デ・クーバを訪れたのは2015年の6月だった。
翌月に迎える7月26日の革命記念日は、キューバにおけるカーニバルの期間だ。
7月26日を挟んだ前後1週間で、夏祭りのようなカーニバルが開催されるという。
そのカーニバルに向けて、街角ではストリート楽団が、真剣に練習をしている様子をよく見掛けた。
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<パーマとポロシャツとおじさん>
街を歩いていると、十数名の楽団に出くわした。
打楽器とホーン隊で構成された楽団だ。
その中心には、水色のポロシャツを着た黒光りしたおじさん。
丸めた紙切れを小脇に抱え、白髪のパンチパーマの頭をポリポリ。。
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何種類もある打楽器の中で、リズムをリードするのは小さなカウベルだ。
小さなカウベルが刻むリズムは一般的なリズムと異なり、とても取りづらいように感じた。
その中でも、白髪パンチのおじさんは、
何小節か繰り返しては止めて、細かくテンポやら、音程やらを指摘しながら楽団を指揮している。
ひょろっとしたパンチパーマのおじさんには、すべての楽器の音とリズムが見えているんだなと感心してしまった。
こうしてカメラを持って近づく日本人に、パンチパーマのおじさんは「好きに見ていきなよ!」というような表情で、あごをクイッと突き出した。パンチのおじさんには死角はなかった。
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<リズムで繋がる ?シアワセ連鎖>
やがて、楽団は練習を止め、どこかへと切り上げていく様子だった。
しかし、練習が終わったはずなのに楽器は鳴り止まない。
楽団をそのまま追いかけてみると、ジャムセッションしながら行進をしていた。
カウベルの刻む軽快なリズムに合わせて、黒光りした楽団のメンバーは、
白い歯を輝かせながら、各々の楽器でカウベルのリズムに委ねていた。
キューバンピープルが潜在的に持つ静かなるエナジィは、
軽快なリズムに導かれ、様々な楽器を介して可視的なものへと昇華していく。
メンバーからこぼれる屈託のない純粋な笑みは、その空間に伝播していった。
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ふと、大通りを挟んだ向こう側の歩道には、さっきまで楽団を指揮していたパンチパーマのおじさんが見えた。
遠くからでも認識出来るほど、おじさんのポロシャツは鮮やかな青だった。
片手にはビニールバックを持ち、もう片方の手では、小さな冊子を頭にあてがっていた。
そういえば、ポツポツと雨が降り始めていた。
遠くから見るおじさんの風貌は、指揮を執っていた印象とは違い、ごくごく普通の散歩中のおじさんだった。
おじさんにとって楽団の指揮を執る事は、まばたきをする様に、呼吸をする様に、誰かと話をする様に、
それくらい日常で当たり前のことなのだろう。
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首都ハバナでも、革命記念日のカーニバルに向けて若者を中心としたグループが、
楽器やダンスの練習をしている様子を見かけた。
首都ハバナに戻って、ハバナっ子の日常を覗きに行こう。
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続く。
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