役目を終えた礼拝堂を宿として守り継ぐ選択をしたルヴェモンという村の話
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建築専門メディアのArchDailyが、フランス北東部ヴィヴィエ=シュル=シエール村の小さな礼拝堂を宿泊施設に変えたプロジェクト「AXE」を紹介している。設計はナンシーとパリを拠点とする建築事務所GENS、完成は2023年だ。
祈りの場としての役目を失い、崩れかけていた礼拝堂を、所有者の村は共同体の資産として取り壊さずに残した。面白いのは、寝室を建物の半分にだけ収め、残る半分をステンドグラスや奉納の銘板ごと手つかずで残した設計の判断だ。古い建物を使いながら守る方法として、ひとつの答えを示している。
AXE / GENS (ArchDaily)
元記事を読む:
https://www.archdaily.com/1186224/axe-gens

フランス北東部、ベルギーとルクセンブルクとの国境に近いヴィヴィエ=シュル=シエールという村に、ひとつの小さな礼拝堂がある。村の南の台地に広がる集落、ルヴェモンの礼拝堂だ。祈りの場としての役目を失い、やがて崩れ落ちる寸前まで傷んだこの建物を、所有者である村は取り壊さなかった。2023年、礼拝堂は建築事務所GENSの手で、6人が泊まれる宿として生まれ変わった。いまはグラン・テスト地方ムルト=エ=モゼル県の貸し別荘として、旅行者を受け入れている。
役目を失った建物を、誰が引き受けるのか
ヴィヴィエ=シュル=シエールは、シエール川の谷に沿ったヴィヴィエ、北の台地のブローモン、南の台地のルヴェモンという3つの集落からなる。ルヴェモンの礼拝堂は、宿泊予約サイト「ジット・ド・フランス」の掲載情報によれば、2010年に礼拝の場としての指定を解かれている。
改修前の礼拝堂は、黄色い塗り壁の小さな建物だった。下の写真は2012年の姿で、礼拝の場でなくなって2年ほどたったころにあたる。

信仰の場でなくなった建物は、使い道を失う。手入れをする人も、修繕の費用を出す理由も薄れていく。ルヴェモンの礼拝堂も、そのまま放っておけば廃墟になるところだった。
建築家たちの説明によると、村はこの礼拝堂を「共同体の資産」と考え、守ることに決めた。選んだ方法は、ちょっと変わった宿泊施設への転用だった。人が泊まり、使い続けることで、建物に新しい役目を与える。小さな自治体にとって、それは解体よりも手間のかかる道である。
部屋は半分だけ。残り半分には手をつけない
設計を担ったのは、フランスのナンシーとパリを拠点にする建築事務所GENSだ。延床面積は約140平方メートル。建築情報サイトAfasiaによれば、工事費は税抜きで約34万ユーロだった。熱環境の設計にはTERRANERGIEが加わり、完成後の写真はルドミラ・セルヴェニーが撮影している。
GENSがまず決めたのは、礼拝堂の内部を半分に分けることだった。新しい寝室は、平面の半分だけを占める独立した箱の中に一列に並ぶ。もう半分は、もとのまま残した。天井の高さも、ステンドグラスも、壁に掛けられた奉納の銘板もそのままだ。

写真のとおり、人工芝を敷いた床に、緑色の枠とガラスでできた箱状の部屋が置かれ、椅子やラグが並ぶ。その奥には、もとのステンドグラスの窓が見える。
奉納の銘板は、願いが叶ったお礼や祈りを込めて、信者が教会に納めるものである。村の誰かがかつて何を願い、何に感謝したのか。その記録が、宿の壁にいまも並んでいる。
寝室の箱を建物いっぱいに広げれば、部屋数は増やせたはずだ。それでも設計者は、半分を空けておくことを選んだ。泊まる人は、寝室の箱から一歩出れば、礼拝堂だったころと同じ高さの空間に立つことになる。

ガラスの壁に映る、もう半分の礼拝堂
分けた2つの空間の境目には、全面ガラスの壁が立つ。寝室側の箱の正面がガラスになっていて、そこに手つかずの半分が映り込む。
建築家たちは、このガラス面が礼拝堂の空間のまとまりを取り戻すと説明している。部屋の箱を置けば、本来ひとつだった大きな空間は分断される。けれどガラスに映る像が、切り離された側に、残された側の姿を重ねる。壁を立てながら、空間を一続きに見せる工夫だ。
祭壇の向きを、夕日と田園へ
キリスト教の礼拝堂は、祭壇のある内陣を東に向けて建てられることが多い。ところがルヴェモンの礼拝堂は、内陣が西を向いていた。GENSはこの珍しい向きを、建物の長所として生かした。
内陣側の切妻の壁に大きな開口を設け、内部をテラスへ、その先の田園風景へと延ばした。かつて祈りが向けられていた方向に、いまは夕日と田園が見える。建築家たちは、キリスト教の空間が持つ東向きの軸を、沈む夕日へ向かう屋外の暮らしの軸に置き換えたと説明している。プロジェクト名の「AXE」は、フランス語で「軸」を意味する言葉だ。

写真では、切妻の壁の下部に緑枠の大きなガラス開口があり、縞模様の日よけがかかる。その前のテラスには、緑と白の縞のデッキチェアが置かれている。
壊さずに使い続けるという選択
役目を終えた建物の前で、持ち主が取れる道はいくつかある。取り壊すか、形だけ保存するか、まったく別の用途に変えるか。ルヴェモンの村が選んだのは、建物の半分に過去をそのまま残しながら、もう半分で人を迎えるという方法だった。
村は2010年に礼拝の場としての役目を終えた建物を抱えたまま、2023年の完成まで、この礼拝堂を手放さなかった。いま礼拝堂には6人分の寝床があり、ガラスの向こうではステンドグラスと奉納の銘板が、泊まる人の前に並んでいる。
役目を終えた礼拝堂を破棄するのではなく、半分を残したまま宿として使い、残すという選択