The motion & The moment. #豚人間のアジト。
ArtBy Hiroyuki Toyokawa on
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<クジラの背中>
小笠原の海域は、クジラにとって大切な繁殖海域となっている。
繁殖のためにやってくるクジラが、最も多くなる2月から4月が、ホエールウォッチングのシーズンとなる。
父島に来た一番の目的は、クジラを見るためだったが、
シーズンも終わりかけでクジラの数もかなり減ってきているらしい。
いざ、クルーザーに乗り込み、小笠原の海へと繰り出してみよう。
クルーザーに乗り込み、クジラが生息する沖合へと向かう。。
小笠原の海を飛び跳ねるように、クルーザーはいきおい良く進んでいく。
しばらくすると、さらに遠くの沖合で、クジラが潮を吹く様子が小さく見えた。
そのポイントへと向けてけてさらに沖合へと進む。
360°見渡しながら、クジラが飛び出して来ないかとワクワクしていた。
不意に、クジラがザプーンと飛び出した。
あまりの一瞬の出来事で、シャッターを押すことさえできなかった。
またしばらく沈黙が続いた。
シャッターに指をかけたまま、目の前に広がる海を注視した。
・・・。
その瞬間を捕らえた、、、
もはや、クジラなのかどうか認識できないレベルだ。。
クジラの背中しか見ることができなかった。
ホエールウォッチングのシーズン終わりかけなだけに、
多くのクジラは繁殖を終え、違う海へと旅立ってしまった。
これを見れただけでもラッキーだったのかもしれない。
<豚人間のアジト>
ホエールウォッチングを切り上げて、
次に目指したのは、南島という島だった。
「小笠原南島の沈水カルスト地形」という名称で国の天然記念物に指定されている無人島だ。
島の自然保護のため、現在は入島制限を設け、
1日の入島人数は100人まで、上陸時間は2時間まで。
尚且つ、東京都認定の自然ガイドが同行しないと入島はできないことになっている。
海のうねりを受けながらも、南島に上陸できた。
静まり返った無人島は、別世界の来たような独特な雰囲気に包まれていた。
島の高台に上がると、ボニンブルーの海が一望できた。
今までに見たことのない青のグラデーショが印象的だった。
遠くの岩壁に見えるのは、ハートロック。
うっすらとハートの形をした岩壁が見える。
そして、この島には映画のロケ地になりそうなプライベートビーチがあった。
正式には「扇池」と呼ばれる。
ジブリ映画『紅の豚』で、マルコという豚人間が、真っ赤な飛行艇の傍ら、
ラジオを聴きながら新聞を読んでいる光景が目に浮かんだ。
完璧なロケーション。
何十年、何百年という時間経過の中で、自然が作り出した作品を前に、
圧倒されるのみだった。
切り立った岩壁も、白く輝く砂浜も。
エメラルドグリーンからボニンブルーへと移り変わる青のグラデーションも。
何もかもが絶妙すぎて、形容する言葉が見つからなかった。
小笠原における自然のエネルギーは、海からも山からも、生き物からも、
どこにいても伝わってくる。
自然という巨大な生命体が、静かに、力強く呼吸をしているのを、
肌で感じることができる。
片道25時間半の移動をも相殺してくれる感動が、
ここには必ずある。
続く。