The motion & The moment. #東京都ガラパゴス二丁目。
ArtBy Hiroyuki Toyokawa on
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<東洋のガラパゴス>
東京から南に1000km。
コンクリートジャングルの東京とは180°違った、ジャングルの東京がそこにはあった。
東京都小笠原村父島。
便宜的に東京都としてあてがわれたそのジャングルは、一般的な東京都とは一線を画す。
気候も違えば、住んでる生き物も違う。
そして、時間の流れ方が全く違う。
大陸から隔絶されていた為、島の生物は独自の進化を遂げていて「東洋のガラパゴス」とも称される。
そんな背景を持った父島を含む小笠原諸島は、2011年にユネスコの世界自然遺産に登録された。
<片道、1日とちょっと。>
空港を持たない父島への交通手段はフェリーのみ。
天気も悪く、海もあいにくの荒れ模様。
断続的に船は揺れていた。
胃の奥深くに吐き気のような違和感を感じながら、本を読み続ける。
そして、やがて襲ってくる睡魔に意識を委ね、しばらく眠りに落ちる。
そんなことを繰り返しながら、客船「おがさわら丸」が目的地の父島に到着したのは、
竹芝桟橋を出発してから25時間半後のことだった。
<戦跡残る世界遺産>
父島にはたくさんの戦跡が残る。
太平洋戦争時、硫黄島における激戦の折に、父島も日本軍によって要塞化していった。
その為、島の中には当時の戦跡があちこちに残っている。
その中でも、世界遺産として登録されることは稀であるようで、
いかに島の生態系が貴重なのかが伺い知ることができる。
放置され錆びきった兵器。
朽ちた重機には「ヤンマー」の刻印。
鬱蒼とした茂みの中には、兵舎として使われていた廃墟が残されていた。
戦後数十年。
植物が生い茂り、建物を少しずつ呑み込んでいく。
カンボジア・アンコール遺跡のタプロームのような趣があった。
小高い丘に隠されたサーチライト。
米軍のB29が上空を飛ぶとき、このサーチライトを引きずり出し、機影を追ったそうだ。
捨てられたように留まり、戦争の生々しさを感じた。
戦争当時、父島においては上陸戦はなかったものの、
空襲は頻繁にあったそうで、島のあちこちには防空壕が掘られていた。
日本軍の使用していた建物などはそのまま捨てられ、数十年の間に植物が好きなように侵食していった。
人間が犯した愚行を丸呑みにしてやろうと、少しづつ少しづつ呑み込んでいく。
コンクリートであろうが、金属であろうが。
鬱蒼とした木々の隙間から木洩れ陽が差す。
枯葉で敷き詰められた地面を優しく照らした。
風が吹いた。
葉っぱが擦合う音が辺りに響く。
この瞬間にも、取り残された戦跡は、少しづつ呑み込まれていく。
この環境を制するのは、人間の支配ではなく、
自然が放つ静かなるエナジィ。
続く。